Summary
座禅をするコンピュータは実現できるか?
-禅的な手段によるコンピュータの学習-
松岡 正剛 (編集工学研究所所長、帝塚山学院大学教授)筆
コンピュータにはいわゆる迷いはない。あたかもマシンが次に何をすべきかを正確に知っているかのように、あらかじめプログラムされた処理が進んでいくのみである。人間の場合は違う。人間は意識にも言語にも判断にもつねに迷いが存在している。つねに揺らいでいる。
仏教や道教は、東洋哲学や日本文化の底流をなしてきた。俳句のリズムや着物のデザインはなんと自由に自らを主張していることか。日本文化では、判断できないことや不確定なことなどは排除の対象とはならず保持される。いわば、ベンチを暖めながら、それらの概念が共鳴をおこしはじめるのをじっと待っているのである。ひとたび共鳴を起こし始めると、これらは主役となって表舞台に登場する。
ZENetic Computer において私が焦点を当てようとしたのは、禅の修行者が禅師に導かれながら禅の公案を解いていく過程にも見られるような、人間の意識と無意識の葛藤によって生じる「ゆらぎ」である。われわれはこの東洋的、日本的感性をコンピュータスクリーン上に投影するとともに、来場者が日本の墨絵の世界に没入できるようなインタフェースを設計した。
このプロジェクトを進める過程において、私の役割は東洋的な遠近法にもとづいた種々のイメージを探し出し提供することであった。土佐尚子氏は、工学的アーティストとしての卓越した感性にもとづき、これらのイメージをインタラクティブ技術と融合させる役割をした。制作過程でわれわれは何度も作品を自分自身で体験し議論した。同時に、われわれの意識にのぼってくる判断過程がしばしば美的感覚をそいでしまうことを強く懸念し、これがおこらないように注意を払った。 また、インタラクションの過程をよりダイナミックにするために、ピーター・デイビス氏のカオス研究の成果であるカオスエンジンを採用した。
ZENetic Computer では、これまで経験したことのない形で、意識が揺さぶられ、物語が体験できる。それは、我々が禅的な手法でコンピュータを学習させることによって実現することができた。これまでの既存概念をすべて捨ててZENetic Computer と向かい合われることを切望する。
Documents
LEONARDO PDF
MIT news Link
ZENetic Computer パンフレット PDF
Tech Talk SERVING THE MIT COMMUNITY PDF
Exhibition
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MASS MEDIA
2004-京都新聞0511「タッチパネルで山水画も超簡単 描画ソフト新開発」
MIT Museum
2004-読売新聞0603「『ゼネティック・コンピューター』心の動き読み返答」
2004-京都新聞0511「東洋の美意識表現できたら 禅コンピューター展」